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鈴木 克彦 アソシエイト, コントローラーズ ファイナンス, 東京

証券会社の組織と各業務について若手の頃から学べることは、ファイナンス部門の魅力のひとつではないかと思います。

学生時代は大学院の数理解析研究所で純粋数学を研究していました。私が専攻していた微分方程式論は、物質の運動をはじめとする物理法則や経済現象を記述する数学的モデルを解析することから発展した学問です。銀行や証券会社がデリバティブの価格やリスクの計算を、確率論を使って行うと聞いたことが金融の世界に興味を持ったきっかけでした。ゴールドマン・サックスでは毎回面接が終わるたびに社員の方が「今日の面接はどうでしたか、ご不明な点などなかったですか」と時間をとってフィードバックを聞いてくれたことが印象に残っています。対話を通じて学生と企業の双方向の理解の一致を図る姿勢から、コミュニケーションを重要視していることが伝わってきました。お互いの考えに耳を傾け理解し合える風土を持つ企業において、自分の考えを表現して働くことはさぞ楽しいだろうと思い、2012年に新入社員として入社しました。

私の所属するファイナンス部門のプロダクト・コントロールは、ゴールドマン・サックスの収益の集計・報告を担当しています。株式、債券、為替など取り扱う商品ごとにチームが分かれており、私は戦略投資部の扱う不動産やプライベートエクイティを専門としています。損益の集計結果と、各トレーダーが自己計算した損益の試算値に大幅な乖離がないか検証も行います。大きな乖離は要因も分析し、トレーダーがより包括的な情報を得られるよう説明します。日々の収益の集計結果は、月末に作成する財務諸表に使われると同時に、内部の市場リスク管理や経営陣の意思決定などにも活用される重要なデータです。また、流動性の低い資産やデリバティブについては、時価の妥当性の検証も行います。たとえば不動産であれば、建物の使用用途やテナントからの賃料、直近で似た条件の物件が市場で取引された例があるか、物件固有の特徴はあるか、など多角的な視点から分析を行います。これらの仕事は、各部署の役割を広範囲に理解している必要があります。証券会社の組織と各業務について若手の頃から学べることは、ファイナンス部門の魅力のひとつではないかと思います。

通勤中に情報ベンダーのニュースを読み、前夜から朝までに海外で起こったニュースやマーケットの見通しをチェックすることから1日が始まります。収益を説明する基本は、自社が取引の結果として持っているリスクに対して、それぞれのリスク要因が市場で変化した割合をかけ合わせることです。この短い時間に得た情報が収益の集計結果の妥当性を再検証する材料にもなります。オフィスに着いてからは、まずチームメイトと当日の予定をたてます。その後日課として、前日に行われた取引や金融商品の在庫から得られた収益の集計を始めます。午後は月末であれば会計閉めの作業を行い、月末以外は他部署とのプロジェクトでの改善策を話し合ったり、新しい取引に対して会計上の分析などをします。夕方はトレーダーから送られてくる当日の損益の試算値と確認済みの前営業日の損益とあわせ、要因分析とともにマネジメントへ提出し、その日の業務は終了します。

後輩と働くときは少しでも新しいことに挑戦する機会を与えるよう心がけています。彼らには会社の将来を担う優秀な社員として接し、自分の仕事の仕方を教えています。OJT研修に多くの時間がかかったとしても、長期的にはよりよい成果がでると考えています。自分が新入社員のときに先輩社員に教えていただいた恩を後輩に同じように接することで返したいと考えています。また、上司は自分のお客様だと思って接しています。定期的に一対一でランチに行き、チーム全体の目標と私の思い描く業務時間の使い方に意識のずれがないかなどを確認するようにしています。短い時間でもお互いの考えがわかると信頼関係が生まれると思っています。

入社後は、自分の専門分野以外の知識やコミュニケーション能力などが幅広く求められ、新しいことに挑戦する機会が増えます。たとえば英語での電話会議などはまったく経験がなく、入社当初はメモをとるのに精一杯でなかなか自分のアイディアを伝えることができませんでした。私は、学生時代のセミナーや研究集会の経験によって、入念に準備したプレゼンテーションでアイディアを伝えることには自信がありました。しかし、英語での経験は皆無。そのことについてマネージャーに相談すると、「メールではなくあえて電話で連絡してみたらもっと英語を話す機会が増えるのでは」とアドバイスをもらいました。事前に要点や英語の文章をまとめてから英語での電話に臨むようにした結果、苦手意識がなくなりました。自分の得意分野以外のことにも興味を持ち、苦にならないよう工夫し挑戦し続けることが重要だと思います。

ワークライフバランスはもっとも重要視していることの1つです。ゴールドマン・サックスでは時折、他業界で成功を収めた方をゲストスピーカーとして招き社員向けの講演会を開催しています。私が以前参加した講演会では、ワークライフバランスを「決まった時間に仕事を切り上げるという受け身の考え方ではなく、より効率的にリソースや時間を配分する戦略のこと」と定義していたことに大変感銘を受けました。それ以来、仕事に優先順位を付けてそれぞれにどの程度リソースを配分するべきか、また有益な結果は積極的に将来再利用することなど、シンプルながらも重要なことを実践するよう心がけています。そうして確保した時間は、自分のワークフローや社内システムの改善案などを考えることに投資されることで将来の仕事の質が向上し、結果的により大きく会社に還元されると思っています。