世界は景気後退に突入

02 04 2020

全世界に新型コロナウィルスの感染が拡大し、景気が急縮小して市場は暴落、政策当局が対応を急ぐなか、景気と市場の落ち込みの深刻さと長さが懸念されています。チーフ・エコノミストを務めるヤン・ハチウスが今後の経済の見方を解説します。

世界は景気後退に直面しているのか?

ハチウス:間違いなく直面しています。当社は、今年の世界のGDP成長率を-1%と予想しており、これは世界金融危機後の後退局面や1982年の深刻な景気後退期よりも厳しい状況です。失速の主因は中国の成長率の大幅な低下にあり、ここ数年の年率6~7%の水準から2020年の中国の成長率は3%に鈍化する見通しです。これは第1四半期に前期比年率-42%、前年比では-9%と、前例のない急収縮を予想しているからです。

中国以外の国では第2四半期の打撃が最も大きく、米国のGDPは年率-34%、欧州は年率-38 .5%と、目を覆いたくなるような落ち込みが予想されます。参考までに米国の数値を歴史的な観点から捉えてみると、第2四半期に予想される減少幅は、1958年に記録された四半期ベースのGDPの戦後最大の減少幅の3倍以上に達することになります。

こうした予測に対するリスクは?

ハチウス:当社の予想はすでにかなり悲観的ですが、特に回復のタイミングに関してリスクは下方に偏っていると言わざるを得ません。現時点では、5月/6月に景気は回復に転じると予想していますが、これはあくまでも新型ウイルスの感染状況次第です。今後1、2ヵ月経っても感染者数が落ち着きを見せず、新規感染者数が大幅に減少しなければ、活動自粛措置が延長され、景気への打撃が増大するでしょう。

また、金融システムを経由した影響が広範囲にわたって波及し、大企業、中小企業を問わず企業が倒産に追い込まれたり、労働市場が著しく悪化するなどのリスクもあり得ます。

世界各国の中央銀行の対策にはどの程度の景気刺激効果があるのか?

ハチウス:今回のショックの性質を踏まえると、短期的な経済動向は新型ウイルスの感染状況とそれに対する人々の行動反応によりほぼ決定づけられると言ってよいでしょう。従って、各国中央銀行が果たす役割は依然として大きいものの、過去の多くの景気後退局面や世界金融危機時のように危機の解決において中銀が中心的な役割を担うとは考えにくいです。いずれにしても、中央銀行はこの困難な局面において需要を喚起し、企業や家計を支えるとともに市場の機能を維持するために、あらゆる手段を総動員すべきでしょう。

財政政策の方が需要の押し上げ効果は大きいと考える根拠は?

ハチウス:財政政策には短期的な景気の落ち込みを緩和する効果はあまり期待できませんが、失業者の収入を支え、負の増幅効果を抑えるためには極めて重要です。このような的を絞った対策としては、失業保険の適用対象の拡大、新型ウイルスの感染拡大の影響で失業した人々へのメディケイド・サービスや食糧配給券の提供、中小企業庁を通じた中小企業向け融資保証、需要の減退で特に甚大な影響を受けている業界の支援策などが考えられます。これらの対策のうちいくつかはすでに議会を通過していますが、景気悪化の打撃を受けている人々の所得支援策を始め、一段の対策が求められるでしょう。

回復は、L字型、U字型、V字型のどのパターンをとる可能性が最も高いか?

ハチウス:経済活動の水準と変化のどちらに目を向けるかによって解釈は異なってくるので、言い方には注意が必要です。水準を重視するのであれば、当社の予想はU字型の回復を想定していると言えるかもしれません。支障をきたした経済活動の大半が元に戻るまでに1年前後を要すると想定していますが、実際のところ、クルーズ船会社など、いくつかの業界は半永久的に低迷が続く可能性があります。

一方で成長率に目を向ければ、当社はV字型の回復を予想しているとも言えます。景気の落ち込みの激しさに加えて、休業を余儀なくされたレストランなど一部の経済分野では急速な回復が期待できることを踏まえると、数四半期にわたって10%強の成長率を記録する可能性があります。ただし、医療体制の改善に予想以上に時間がかかった場合や労働市場を通じた負の乗数効果が予想以上に大きくなった場合に回復時期が当社の予想より遅れるリスクもあり、成長率がどの程度の水準に達しても、それは極めて低い水準からのものとなるでしょう。

向こう数週間の注目点は何か?

ハチウス:「情報過多」の状況が続くでしょうが、その中で最も注目している情報は感染者数をはじめとする医療情報。新型コロナウイルスの感染状況や重症度のほか、ウイルス感染の季節性といった情報が重要だと考えます。

次に注目しているのは、米国の株式、金利、社債市場の動きといった通常の指標だけでなく、コマーシャルペーパーの発行状況やスプレッド、クロスカレンシー・ベーシス、欧州国債のスプレッドなど、金融市場の機能を示す尺度です。

このほか、通常の経済指標にも注目していますが、新型ウイルスによる影響がこれらの指標に顕著に表れるまでには若干の時間がかかりそうです。このため、過去数週間、当社はレストランの予約件数、映画館のチケット販売数など、非伝統的な高頻度指標を注視してきました。しかし、今やこうした尺度があまり意味を持たなくなってきています。例えば、レストランのオンライン予約を扱うウェブサイトであるopentable.comを見ると、現在、米国の大半の都市で予約件数は100%の減少を記録しており、しばらくこうした状況が続くでしょう。このため、現在では通常の経済指標のなかでも比較的タイムリーなもの、例えば失業保険申請件数や景況感調査などに注目しています。

 

上に記載された予想値は2020年4月2日時点のものです。予想はその後変更されている可能性があります。

 

 

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