AUG 16 2019
アラスカ物語 ― 新田次郎
今年の夏季休暇は大好きなアラスカを再訪する機会を得ました。アラスカに関連する書籍というと、荒野へ(原題 In to the Wild, John Krakauer)や星野道夫さんのものが有名ですが、アラスカ物語は、実話に基づくフランク安田さんという日本人男性の数奇な運命の物語です。15年ほど前彼の墓標のある北極圏直下にあるアラスカ州バラー・ビーバー村を訪問しました。その小さな村へプロペラ機で向かう途中、眼下に広がる雪に覆われたユーコンの雄大な景色をみながら、小説で描写されている犬ぞりで雪原を何日もかけてわたる場面が目に浮かびました。フランク安田の幾度も困難に立ち向かう強さに本を通じてふれてみてください。
AI vs 教科書が読めない子どもたち ― 新井紀子
本書については賛否両論あるでしょうが、日本の教育のあり方について一石を投じるきっかけとなっているのではないかと思います。AIが浸透し、更なる自動化が進むこれからの世界を生きていくうえで、必要なスキルは何かということを、2児の母として日々考えます。東京大学合格を目指すAI「東ロボ君」の話を通じて、読解力の必要性が語られています。論理的な思考、プレゼンテーション力の基礎ともなる読解力をどう育むのかは大事なテーマてす。
高山 大樹
(ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター)
AUG 9 2019
道は開ける ― デール・カーネギー
有名なロングセラーなので、お読みになった方も多いと思いますが、世の中で何かを成し遂げようと挑み続けている人にとっては、あらためて知っておくべき考え方かと思います。人生で直面する困難や悩みに対し、健全な精神状態を保ってどう乗り越えていくか、幸せや豊かさをどう実感するか、など先人の知恵が満載です。「悩みの大半は判断の根拠となる知識がないのにあえて判断しようとするから」という一文などは、「その通り」と深く納得しました。
ホワット・イフ ― ランドール・マンロー
「野球のボールを光速で投げたらどうなるか」「地球から海の水を抜いたらどうなるか」などジョークのような話を科学的に検証した娯楽本です。証券アナリストとしての私の仕事では「予想の必然」という場面に出くわすことがあります。点と点の事実を繋ぎ、その結果起こり得る一連の事象が客観的であれば、高い確率でその通りになります。こういう客観的な「What if」を考えられる人は仕事人としても魅力的な人だと思います。
松澤 正午
(ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター)
AUG 2 2019
失敗の本質 日本軍の組織論的研究 ー 戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎
大東亜戦争における日本軍敗北の理由を、組織論という社会科学的アプローチから探究したベストセラーです。第1章でノモンハン事件から沖縄戦までの代表的な敗北6ケースを分析したのち、第2章で日本軍に固有の失敗要因について考察を行ない、第3章では日本軍がこうした特性を持つに至った根源を明らかにし、更に戦後日本の各種組織との連続性にも光を当てています。
第2章では米軍との比較を行うことで日本軍の特性を浮き立たせようとしていますが、「演繹的(グランドデザイン)」、「標準化」、「構造主義(システム)」といった米軍に対するキーワードは、米国系の会社に身を置く者として実体験に照らしても説得力が高いと個人的には思います。また末尾の「文庫版あとがき」では、結果的に30年間の平成の停滞を見事に予見していて興味深いです。
初版は35年前ですが、本書の分析は些かも色褪せるところはなく、いつ読んでも新しい発見があります。自分自身の仕事の進め方や、お客様へのアドバイスを考えるに際して、常に視座を与えてくれる貴重な一冊です。
吉村 隆
(ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター)
AUG 1 2019
平成金融史-バブル崩壊からアベノミクスまで ー 西野智彦
日本の金融システムが崩壊の危機に瀕したのは約20年前ですが、平成元年から明確化したバブル崩壊がそのきっかけをつくりました。思えば、平成の約30年間は日本の金融システムが大きくかわり、それが国民生活にも大きな影響を与えた時代でした。
私自身昭和60年から金融界に身を置いていますので、この30年間の激動の時代を体験してきました。この本を読むと、そうだった、そうだった、と懐かしく思うことが多く書かれている一方で、裏舞台で繰り広げられていた知られざる悲喜劇も紹介されていて、まさに、平成金融史になっています。
歴史は繰り返す、と言いますが、これからの金融界も激動の時を迎えそうですので、直近の過去を振り返るのも大事なことで、この本はそのための格好の素材だと思います。
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