深夜特急 〈第一便〉 黄金宮殿 - 沢木耕太郎
私の人生に大きな影響を与えた本というと、間違いなくこの一冊になると思います。この本は、1970年前半に著者がインドのニュー・デリーからイギリスのロンドンまで乗り合いバスだけを使ってユーラシア大陸を一人旅する旅行記です。この本を読んで、私も大学を1年間休学し、1997年大阪の南港から鑑真号に乗り上海からポルトガルまでバスと列車でユーラシア大陸を横断する一人旅をしました。色々な土地で、様々な文化や人々と直接出会えたことは人生の大きな財産になっていると思います。
〈第一便〉は、出発地のデリーに到着する前に立ち寄った香港・マカオ・東南アジアの話がメインです。旅の始まりである香港・マカオ編は、旅の熱気や計画のない旅の面白さが特に感じられる一作です。コロナ禍で旅行がしづらい今こそ是非。
喜嶋先生の静かな世界 - 森博嗣
推理作家で大学工学部の元助教授でもある作者の、学問の深遠さ、研究の純粋さ、大学の意義を語る自伝的小説です。この本を読むと、学ぶことの大切さを再発見できます。学べることの幸せを感じられます。何か新しいことが学びたくなります。そして、大学院時代が少し懐かしくなります。個人的には知的好奇心が無くなった時が、自分の成長の止まる時だと思っています。日々の仕事が忙しくて、新しいことを最近学んでないなと感じる方はこの本を読んでみてください。
江原 正弘(ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター)
チーズはどこへ消えた? - スペンサー・ジョンソン
本書は2匹のねずみと2人の小人が迷路に隠されたチーズを探すお話ですが、1998年にアメリカで出版され、2019年時点で2800万部をこえるベストセラービジネス本です。
早いもので私が金融業界に身を置いてから30年近くがたちました。その間、大小さまざまな出来事がありました。今思えば大したことはなかった2000年問題や思い出すだけでも心拍数が上昇する2008年の金融危機などです。
いまでこそ、楽天家と評されることの多い私ですが、本書に出会うまではすべての変化に対し漠然とした不安を抱いて過ごしておりました。変化にうまく対応するために、常日頃からどのような準備をすべきなのか。また、変化を逆手にとって味方につけるにはどうすればよいのか?私を変えてくれたのは本書です。世界は今、未曾有の変化の只中にあります。不安を感じられている方、この変化を味方につけたいと思われている方、ぜひこの本を手にとってみてほしいと思います。
一人ならじ 「石ころ」 - 山本周五郎
涙腺の弱い方は人前で読まないでください。戦から大切そうに石ころを持ち帰る武士のはなし。
まだ私がこの業界で駆け出しだったころ、なかなか結果の出せない自分に対して「自分はここで何をしてるんだ」、「自分はこの仕事で本当に良かったのか」、「周りの人々はちゃんと見てくれているのか」とあせりを感じたものです。そんなときにはいつもこの本を読みました。「石ころ」の主人公はたった一つの目標のために命をかけて戦います。その目標のほかには名声などを求めず、最後に目標を達成した証に石ころを持ち帰るのです。
この小説を読んで落涙しなかったことがありません。たった数ページの小説ですが、折れそうな心を元気付けてくれます。ちなみに「いちにんならじ」には、ほかにも「三十二刻」、「芋粥」といった涙なしには読めない短編が収録されておりお薦めできます。
河野 祥 (ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター)
心 - 稲盛和夫
著者は京セラの創業者でJALの再生を果たした稲盛和夫氏。コロナ禍で個人、企業が様々な分野でそれぞれ価値の再定義を迫られているかと思います。ただどの時代にも普遍的で変わらない考えや哲学があることを感じるのが本書です。「すべては心に始まり、心に終わる」。たくさんの経験談を交えながら、人生の目的は心を磨き他に尽くす(利他)精神、逆風にさらされても正しい道をまっすぐに行く大切さなど、たくさんの気づきを与えられます。
通貨「円」の謎 - 竹森俊平
危機に直面した国の通貨は下落するはずなのに、金融危機、震災など危機を迎えるたびに訪れる円高に漠然とした疑問を持っていたころ、円高に苦しんだ海外経験の長い父より本書をプレゼントされました。円高となる背景には多額の経常黒字と対外純資産を持つ日本の特性があるとしています。後半は経済再生には円安が不可欠との主張ですが、金融に身をおくものとして、とてもポピュラーな「為替」に考えを巡らせ、その奥深さに触れることのできる一冊です。
足立 洋子 (ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター)
限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭 - ジェレミー・リフキン
将来のパラダイムシフトを予測する学術書的な本が好きです。これもその一つ。少し前の本なのですが、①再生可能エネルギー②3Dプリンター③IOTインフラの普及で、誰もが生産消費者(プロシューマー)になり得、財やサービスの価格(コスト)はゼロに近づいていき、今後30年で重厚長大的な資本主義は少なくとも部分的には歴史的意義を終える、簡単に要約するとこういうことかと思います。勿論全部を鵜呑みにはできませんが、この様な本を読んで世の中で起こることを予測していく作業はとても楽しく、また自分がいかに今の常識に縛られた考えをしているか痛感させられます。
小説十八史略 ― 陳舜臣
子供の頃読んだこの本で、歴史に恋に落ちました。この本は中国の歴史を神話時代から元辺りまでを、とても生き生きと人物に寄り添って描いています。中国の歴史はすさまじく、一つの国が倒され、新しい王朝が誕生し、理想の組織が作られ、また腐敗し、倒され、ということをこれでもかというほど繰り返します。その間、本当に多種多様な人物がキーマンとなり歴史を動かしていきます。昨日の敵は今日の友だったり、一生かけて復習を計画したり、名君の影には彼を支えるしっかり諫言できる人物がいたりと、何千通りにも及ぶキャラクターとその人生の行く末を存分に楽しんでもらえる一冊だと思います。
山田 俊一 (ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社取締役)
修身教授録 ― 森信三
今年、私が講師をしているMBA プログラムの講師同士の勉強会の際に題材となった書籍です。
昭和12年4月から14年3月にかけて森信三氏が行った「修身」という講義の議事録です。受講生の観察から始まり森氏の授業内容が一言一句書かれ、そして受講生の感想で終わるというものです。
出会いを天命と思い尊ぶこと、虫でなく人間として生まれたことを自覚し感謝すること、日本に生まれたことの意味を考えること、40歳までは準備期であること、志と野心は違うこと、謙遜は我が身を謹んで己を正しく保つこと、教育は詰め込むものではなく志を奮い立たせて自ら勉強するようにさせること、など、教育者そして人間の生き方について、金言が溢れている書籍で、メンタリングの際にも活用しています。ゴールドマン・サックスの人を育てる文化にも通じるものがあり、根底に人間愛が流れる講義を受けている気にさえなってくるので、コロナ禍でいろいろ迷った方にはおすすめの一冊です。
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