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グローバル展望

中国インバウンド消費

中国では中間所得層の拡大に伴い、旅行先としての日本の人気が高まっています。その結果、過去10年間に日本でのインバウンド消費が押し上げられてきましたが、足元では中国の成長鈍化や人民元安をめぐる懸念が高まっています。日本経済担当チーフエコノミストの馬場直彦が日本のインバウンドツーリズム(訪日外国人旅行)や成長への潜在的な影響について解説します。

訪日中国人旅行者の規模はどの程度で、何がこの伸びを後押ししているのか?

馬場:中国人は訪日外国人旅行者に占めるシェアがトップで、日本でのインバウンド消費にも最も大きく貢献しています。例えば、2017年の中国人によるインバウンド消費額は約1.2兆円と、2005年の実に10倍に達しました。滞在中の中国人1人当たりの消費額も、中国人に次いで多い韓国と台湾からの訪日客の消費額を大幅に上回っています。

これには複数の要因が寄与していますが、とりわけ中国における1人当たり所得の増加が長期的に極めて大きく貢献していると考えられます。そのほか、近年では対円での人民元高傾向、日本政府によるビザ要件の緩和、消費税免税範囲の拡大、格安航空会社(LCC)の日本への就航なども、中国人の訪日旅行者が増加した有力な要因として挙げられると考えています。

中国インバウンド消費の日本経済への重要性は? 

馬場:2014年以降、インバウンド消費は日本の前期比年率実質GDP成長率を平均0.1%ポイントほど押し上げてきました。日本の潜在成長率が0.9%程度であり、インバウンド消費全体の約3分の1を中国人が占めることを考慮すれば、無視できない影響力です。

訪日外国人客数は9月に5年ぶりに減少しましたが、今現在、中国インバウンド消費に対する最大のリスクは?

馬場:9月は水害や地震など自然災害が相次いだことから、訪日外国人客数のデータは割り引いてみる必要があると考えています。中国インバウンド消費にこれまで最も大きな影響を及ぼしている根本的な要因は、為替レートと中国の1人当たり名目GDPです。特定の下振れリスクシナリオの下で中国インバウンド消費をモデル化したところ、対円での人民元安の進行とIMF予想を下回る1人当たりGDP成長率をもとにした最も厳しいシナリオでは、中国インバウンド消費が基本シナリオと比べて16%減少する可能性があります。中でも、人民元安による影響が特に大きくなっています。

中国インバウンド消費が減少した場合の影響を軽減するために日本が取れる対策は?

馬場:日本政府はビザ要件の緩和や消費税免税範囲の拡大など、インバウンド消費の押し上げに有効な政策措置を取ることができます。また、空港発着枠の拡大、宿泊施設の増設、WiFiスポットの整備など、インフラの拡充や旅行者受け入れ能力の強化を通して、より多くの外国人客を呼び込むこともできます。もっとも、中国インバウンド消費がこれまで急速かつ大幅に増加してきたことを考慮すれば、最近の減少などは、極めて高い水準からの一時的な調整の範囲内と捉えるべきでしょう。