Search

グローバル展望

グリーンプロジェクトボンド

グリーンプロジェクトボンドは、再生可能エネルギー分野での資金調達のあり方を大きく変える可能性を秘めています。ストラクチャードファイナンスの担当部長井上徹と、日本最大級の再生可能エネルギー発電事業会社、ジャパン・リニューアブル・エナジーの竹内一弘社長が対談しました。 

社会的な意義を持つ投資

——プロジェクトボンドとはどのような債券でしょうか。

井上 プロジェクトボンドとは、事業に必要な資金を金融機関からの借り入れではなく、投資家から調達するために発行する債券のことです。私は、主に新たな金融商品の開発に長年携わってきましたが、2000年代に入った頃から金融商品が果たす社会的な意義を意識するようになりました。これからの金融商品には投資を通じていかに世の中に貢献するかという視点が不可欠で、それこそが自分たちのビジネスを長続きさせることにもつながると考えたのです。

そんなときに具体的なテーマとして浮上してきたのがインフラ分野での投資でした。道路や発電所などインフラの建設には従来、銀行から融資を受けるのが一般的でした。しかしインフラの建設に要する資金の回収は長期にわたります。従来の銀行の融資は短期が中心となることもあり、借り換えやその都度の金利見直しなどの必要がありました。

一方で年金や生命保険などの機関投資家は、加入者から預かった資金を超長期で安定運用する使命を持ちます。その受け皿として国債や電力債などが利用されてきましたが、インフラ分野にはこれまでその資金が有効活用されていませんでした。固定金利で長期運用が可能な商品を設計できれば保険・銀行などを含む機関投資家ニーズがあると考えました。

——再生可能エネルギーへの取り組みについて教えてください。

井上 2011年の東日本大震災を境に日本ではクリーンなエネルギーが強く意識されるようになりました。そこでインフラと資本市場を結び付けるビジネスを再生可能エネルギーにも応用できないかと考えました。実現すれば社会的な意義が一層強まります。

ゴールドマン・サックスは日本に進出してからすでに40年以上たっています。日本が国を挙げて再生可能エネルギーへの転換を進める中、環境に配慮したクリーンエネルギーの普及に貢献することはやりがいのあるビジネスです。そこで13年にジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)と共同で、日本におけるグリーンプロジェクトボンドの第1号案件として、行方太陽光発電所(茨城県行方市)の資金調達をアレンジしました。他にもJREの岩出山(宮城県大崎市)、大郷(宮城県黒川郡)、波崎(茨城県神栖市)などの太陽光発電所を含む17の発電施設で、グリーンプロジェクトボンドによる資金調達を実現させています。

竹内 JREは再生可能エネルギーによる発電事業を行う会社として、ゴールドマン・サックスの出資により2012年8月に設立されました。当時は政府のエネルギー施策により、再生可能エネルギーを利用した発電を拡大させようと、7月に固定価格買い取り制度が導入されたばかりでした。

創業から4年を迎えた現在、全国で太陽光発電所と風力発電所を運営しており、また近くバイオマス発電所も着工する予定です。

再生可能エネルギーを活用した発電事業を手掛ける会社は増えていますが、当社のように太陽光、風力、バイオマスの3つを手掛けている企業は多くありません。また、事業の計画から施工・建設後の運営まで一貫して手掛けている点も当社ならではと自負しています。

日本初のグリーンプロジェクトボンド

——グリーンプロジェクトボンドの組成にあたっては、どのような苦労がありましたか。

井上 グリーンプロジェクトボンドは日本初の試みでした。欧米では既に実績がありましたが、太陽光発電を対象にしたものは世界でも例がありません。また、太陽光発電の計画段階で債券を発行するのも大きな特徴です。そういう意味で、格付け会社や投資家からの理解を得るには時間がかかりました。

しかし太陽光の発電量は計算できますし、国の買い取り制度もあります。例えば商業施設やオフィスビルなどと比較をした場合でも、将来のキャッシュフローの予測はしやすく、事業リスクは低いといえるでしょう。その点を粘り強く説明していくうちに、次第に理解が得られるようになりました。これまでに保険会社や地方銀行などの投資家が購入しています。

——ゴールドマン・サックスとビジネスを行うメリットは何でしょうか。

竹内 ゴールドマン・サックスは高い知名度と国際的なネットワークを持ち、世界中ですでに再生可能エネルギーへの投融資を行っています。豊富な経験と情報を蓄積した金融のプロの助けを借りて事業を進めることができるのは、私たちにとって大きなメリットです。

JREの1号案件となる行方太陽光発電所で、画期的なグリーンプロジェクトボンドを活用して資金を調達できたのも、ゴールドマン・サックスの優れた商品開発力のおかげだと思います。

環境に配慮した資金調達の仕組み

——投資家にとってのグリーンプロジェクトボンドのメリットや投資意義をどう考えていますか。

井上 長期固定金利の運用商品に対する投資家ニーズは高いでしょう。国債よりも利回りがよくて、格付けを取得しているためリスクを評価しやすい。そういった商品はあまりありません。

それに加えて、投資そのものに社会的な意義が含まれるという点がポイントです。再生可能エネルギーなど環境に配慮した事業に資金使途を限定する「グリーンボンド」の発行が日本でも増えています。投資家のESG投資(環境、社会、企業統治を考慮した投資)への関心の高まりと一致しているのではないでしょうか。株式投資においてもESG投資の残高は増加傾向にあります。機関投資家は環境を重視した投資姿勢を強めていて、債券の分野にもそれが表れてきています。「グリーンプロジェクトボンド」への投資は、クリーンエネルギー推進に積極的であることを示すことにもなり、ESGに敏感な投資家の人気を集めています。

——今後、グリーンプロジェクトボンドに何を期待しますか。

竹内 再生可能エネルギーの開発を通じ、幸福で持続可能な社会づくりをリードしていくことが当社の目標です。当社では20年までに総発電容量を1000メガワットまで拡大する方針を打ち出しています。再生可能エネルギーは日本だけでなく、世界的にも重要な社会インフラになっていく可能性は高いでしょう。

そのとき資金調達は大きな課題となります。グリーンプロジェクトボンドが定着すれば、ファイナンスの裾野が広がります。今後は機関投資家だけでなく、個人投資家の中にも投資をしたいというニーズが生まれてくるでしょう。再生可能エネルギーのさらなる普及のために、グリーンプロジェクトボンドが果たす役割は大きいと思います。

井上 最近では日本で開発したグリーンプロジェクトボンドに対する問い合わせがアジアをはじめ世界各国から来るようになってきました。これからはより広い舞台で、グリーンとビジネスの橋渡しができればと考えています。

 

(9月23日日本経済新聞朝刊広告特集よりゴールドマン・サックスが作成)