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夏休みの読書2021

ゴールドマン・サックスの社員が、夏休みにお勧めの本を紹介します。

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高鍋  鉄兵(ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター)


AUG 16 2021
 

The Great Gatsby   F. Scott Fitzgerald

言わずと知れたアメリカ文学の代表作ですが、この原典と複数の日本語訳を含めて一番何度も読み返している作品かもしれません。世界恐慌前のニューヨークの熱狂、退廃的な雰囲気、若者のはかなさや人間の悲しさが美しい英語で描かれています。語り手のニックが証券会社勤務ということもあり、個人的には作品への親近感が増しました。また、この作品は何度も映画化もされていますが、2013年のバズ・ラーマン監督作品もお勧めです。原作を読んで映画を観てみるのも面白いかもしれません。

アフターダーク    村上春樹

簡単に言えば、ある一夜の若者の群像劇です。村上春樹さんの作品の中では一番さっぱりとした作品だと個人的には思っています。短いですし夏休みにさっと読むには適した作品ではないでしょうか。一方、さっとは読めるものの、そこは村上春樹ワールドで難解な部分もありますので、何度も読み返す必要があるかもしれません。自分も何度も読み返しました。村上春樹さんの長編作品ではノルウェイの森が映画化されているのですが、この作品も映画化に向いていると思っています。小説として映像的な視点で読める作品だと思います。

 

 

三好  輝子(ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター)


AUG 9 2021

 

The Road Less Travelled  ー  M. Scott Peck

学生時代に読んだペーパーブックで、本屋でなんとなく手にした一冊ですが、spiritual growth とは何か、エゴ・依存と愛情の違い、困難との向き合い方など心理学的に書かれてますが、社会経験の少ない自分のその後の考え方に影響のあった一冊です。日本の大学を休学してアメリカ留学する際、高度経済成長を遂げた日本の大人から反対意見がある中、背中をおして応援してくれた両親の愛情にも気づかされた一冊です。

生き方   稲盛和夫

人生、仕事の結果は熱意と能力の掛け算だけではなく、考え方がとても大事だということ、迷った時原理原則に立ち返って判断すること、視点を変えて答えを導く、など生きる上でのヒント、気づきを与えてくれた本です。心をリセットしたいとき、松下幸之助の「素直になるために」とともに今も繰り返し読み返す本です。

跳びはねる思考  ー  東田直樹

自閉症の著者が見る世界観に感動しずっと心に残った本です。人も風景の一部で山も空気も鳥も一斉に話しかけてくる感覚、記憶が線でなく点であり、時間と空間の旅を楽しみながら、決められた場所にいるという役割を果たしている日常など、多様な考え方、感じ方に大きな気づきを与えてくれた一冊です。

 

 

山上  千晴 (ゴールドマン・サックス証券株式会社 マネージング・ディレクター)


AUG 4 2021



一分で話せ - 伊藤羊一

今から数年前のことですが、自分のコミュニケーション方法や話し方について悩んでいて、プレゼンや会議、座談会などで、自分の考えをより簡潔かつスマートに言えるようになれないかと思っていたときに出会ったのがこの本です。自分が「伝える」ことにばかり気を取られ、そもそも相手に何をしてもらいたいのか、自分が何を達成したいのか、について思いが至っていなかったことに気づかされました。ちょっとしたコツや比較図もとても分かりやすく、最後の実践編には取り入れやすいアドバイスも多く載っています。今でも大切なプレゼンなどの前に、リマインダーとして読み返したりします。簡単に読めるので、ぜひ手にとってみてください。
 

 

馬場 直彦(ゴールドマン・サックス証券株式会社 日本経済担当チーフ・エコノミスト)


AUG 2 2021

 

天祐なり(上・下) - 幸田真音

強烈なデフレからの脱却を目指し、1930年代に、タブーとされていた日銀国債引き受けによる財政拡大を柱とする、いわゆる「高橋財政」を実施した高橋是清の生涯を描いた作品です。高橋財政はケインズ政策と言われますが、経済学にケインズ政策が登場する5年前に実施に移されている所に、高い先見性が窺われます。彼は日本経済を見事に復調させましたが、二・二六事件で非業の死を遂げました。また、ペルーの銀山経営に失敗して一文無しになったかと思えば、日露戦争の戦費調達のため、当時ジャンクに過ぎなかった日本国債を海外で売りさばく等、ダイナミックな人生を歩みました。そんな彼のバイタリティに触れるだけでも、一読の価値はあると思います

金利と経済  翁邦雄

日銀を代表するエコノミストとして長く活躍された著者は、私がエコノミストへの道を踏み出すきっかけを与えてくれた恩人でもあります。「異次元緩和」に対して、早くから警鐘を鳴らし続けてきた翁氏は、日銀が如何にデフレ脱却に向けた短期決戦で挫折し、紆余曲折を経てイールドカーブ・コントロールへの「転進」を迫られたのかを、時折ユニークな寓話的視点を織り交ぜつつ語りかけてくれます。例えば、期待への働きかけを重視する現在の金融政策の枠組みについて翁氏は、「前向きな確信をもって飛べると信じている間は飛び続けられるが、現実を直視して本来は飛べないのだと気が付いた途端に墜落してしまう気合の政策」とも評しています。