Cars
2025今後10年間で、自動車業界は大転換期を迎えます。クルマ、自動車メーカー、消費者は大きく様変わりします。
技術革新によるこの変革には4つの大きな潮流があります。
2025年の車は…
-
環境に優しい
気候変動を懸念する消費者や規制当局は、二酸化炭素の排出量を削減するよう自動車メーカーに圧力をかけています。
運輸部門が排出する世界の温室効果ガスの割合
(%) -
利便性
世界の都市の交通渋滞は深刻化しています。
車の稼働率は5%にもかかわらず、所有コストは上昇しており、そのため車を有効に活用するためのビジネスチャンスが生まれています。2010年~2025年の世界の都市人口の上昇
-
安全性
自動車業界では交通事故を減らすことを長年の優先事項としてきました。
世界的な高齢化社会に突入し、安全な交通手段へのニーズがより高まっています。死者数
負傷者数
世界中で起きる交通事故
-
低価格
世界の1人当たり所得が上昇するにつれ新興国での車の保有率も拡大します。
こうした新しい消費者が求めるのは、小型で低価格の車種です。
2025年に予測される
自動車販売台数中国インド世界2025年に予測される自動車販売台数
2025年の車は今の車とは全く違っているでしょう。
クルマを取り巻く環境を大きく変えるトレンドを紹介します。
trend one燃料、プラグイン
温室効果ガスと大気汚染問題が、自動車業界全体で車の燃料改革を推し進めています。燃費とCO2規制により、自動車メーカーはより効率性の高いエンジンを開発しなくてはならなくなっています。
2025年までに電動化システムを採用した車両販売は、現在の5%から25%に増加するでしょう。
しかしそのほとんどはハイブリッド車で、95%の車は少なくとも動力の一部を化石燃料に頼ることになります。つまり、自動車メーカーは新しい基準に準拠するため、エンジン熱効率の向上に迫られます。
燃料電池などの代替電源の開発は全体の効率性を高めますが、それも普及してこそです。日本政府は2025年までに燃料電池車を220万円(1.8万米ドル)で販売することを目標に掲げています。世界の自動車販売においてはまだまだ小さな市場ですが、この車両価格であれば一般的なハイブリッド車と競合できるでしょう。
燃料システムの比較
-
内燃型
動力伝達系全体のテクノロジーを組み合わせることで、内燃エンジン型の車の燃費性能を高めることができます。
これには、ガソリンの直噴、ターボチャージ、高速自動変速などが含まれます。 -
ハイブリッド<
ハイブリッド車は、燃費性能を高めるため、
ガソリンあるいはディーゼルエンジンと電気動力を組み合わせて動き、
回生ブレーキと自動車のエンジンでバッテリーを充電します。 -
ブラグインハイブリッド
プラグインハイブリッド車は外部電源を使ってバッテリーを充電できるため、
従来のハイブリッド車と比べて電気のみでより長い距離を走行できます。
ハイブリッド車と同様、内燃エンジンを搭載しています。 -
電気自動車
100%電力のみを使って動く自動車は、ハイブリッド車や従来の自動車と比べてより簡単な動力伝達系となっています。
電気自動車メーカーは、今日の販売価格の50%を占めるバッテリーの低価格化に重点を置いています。 -
燃料電池車
燃料電池自動車は、水素型の燃料電池を使って電力を作ります。
走行中は水以外のものは一切排出しません。
trend two軽量化
燃費を高めるため、自動車メーカーは車全体の軽量化を模索してきました。
一方、自動車業界の厳しい安全基準は、概して
より重い車体パーツを使うことを義務付けています。
自動車メーカーはアルミ・ハイテン材・CFRP(炭素繊維)などの軽量かつ強固な素材を利用することで、この矛盾は緩和されつつあります。
しかし、こうした素材は高価格で、特にCFRPの利用は、主に高級スポーツカーに留まっているのが現状です。燃費改善の追い風を受けて、次第にアルミやハイテン材の利用が拡大するでしょう。
重量でみる素材のコスト高
新素材はより強固かつ軽量だが、自動車メーカーにとってはかなり高価
一般鋼
ハイテン
アルミ
アルミ合金
CFRP
trend three自動運転車
かつてはSF小説にしか登場しなかった自動運転車が現実のものになりつつあります。
自動運転車は、交通事故の減少や渋滞の緩和をもたらし、より多くの人々に移動手段を提供してくれます。
この分野には業界内外の企業が参入し、市場競争は激化しています。完全自律走行車の車道テストはすでに行われており、準自律走行車は今後1~2年で商業化されると予想されます。
ただし、このイノベーションにはリスクが伴います。ソフトウェアが運転を制御することで、新たなハッキングへの脆弱性やそのほかの危険に見舞われる可能性があり、企業としては無視できない責任問題につながります。まずは、緊急時にドライバーが介入できる車の実現可能性が高いといえます。
自動化レベル
- 適応型クルーズコントロール
- レーンセンタリング
- 自動ブレーキ
- サーマルイメージングカメラ
- 緊急時運転用のハンドル
- マルチレンジセンサー
- 超音波センサー
- ミリ波レーダー
- 可動型シート
- 行き先入力
- 完全自律型ハンドリング
- 電力システム
- ミリ波レーダー
安全支援
ドライバーはシステムを切り替えて車を制御できます。
複雑な運転支援
二つ以上の自動システムが同時に動作します。
ドライバーは道路状況をモニタリングし、必要に応じて制御できます。
準自律走行
車は完全に自動運転されますが、緊急時にはドライバーが制御できます。
完全自律走行
車はドライバーによる操作なしで、安全を期した運転を行います。
出典: ゴールドマン・サックス グローバル投資調査部
車を激変させる革新的技術は、自動車メーカーにも大きな変化をもたらします。
trend fourサプライチェーンの進化
低燃費車へのニーズの高まりは部品価格を大幅に引き上げ、車1台当たり2500 米ドル以上のコスト増となるでしょう。部品メーカーは、コストを抑えながら技術を磨いていかなければなりません。部品メーカーにとってこれは挑戦である一方、ビジネスチャンスが広がることになります。
CO2削減に必要なコスト
1台あたりの平均コスト増(USドル)
出典: IHS、会社資料、ゴールドマン・サックス グローバル投資調査部
大規模メーカーの場合、リスクを最小化するためには
研究開発費の増額とあらゆる技術の多角化が必要となるでしょう。
一方中小規模メーカーの場合、専門外の分野では他のサプライヤーと部分提携しつつ
コアとなる技術に投資することもできます。
trend five新規参入
消費者向けテクノロジー企業が、ソフトウェアやテクノロジーが主導する自動車産業に新規参入することは驚くに当たりません。携帯電話ほどではないとしても、車の世界にも、デザインや使いやすさ、自動支援、バッテリー寿命を重視することで、新たなイノベーションが生まれつつあります。
電気自動車の部品点数は通常車両の3分の1で参入障壁が低く、テクノロジーのイノベーターたちが自動車業界に参入するカタリストとなりました。
少ない部品点数 = シンプルな製造
出典: 経済産業省、会社取材、ゴールドマン・サックス グローバル投資調査部
2025年の車は、それを取り巻く環境に応じたものになるでしょう。
新しいタイプの運転手や運転スタイルが、自動車メーカーにとって, 新たなチャンスを生み出します。
trend six繋がるクルマ
モノのインターネット化(IoT)は、日常的に使用するデバイスをネットワークに繋ぐことで、私たちの生活に様々な可能性が開かれることを示しました。
繋がるクルマも同じです。
繋がるクルマは、相互にあるいはさらに広い世界とコミュニケーションをとることが出来ますが、それは事故を減らし渋滞を緩和するだけではありません。自動車業界を超えた強力な影響を持っています。たとえば、保険会社はドライバーの行動をモニタリングし、優良ドライバーに特典を与え、違反・事故ドライバーにコストを割り振るようになるでしょう。配車サービス企業は、自動車に乗りたい人と不稼働の自動車をよりよくマッチングできるようになるでしょう。
カーシェアをしたいか?
ジェネレーションZ
ミレニアル世代
ジェネレーションX
団塊の世代
カーシェアの人気は世代間で異なります。
ミレニアル世代はカーシェアに抵抗がありません。 出典: ニールセン
カーシェアに対する自動車業界の受け止め方はさまざまです。 世界中の車両は通勤や日中の近距離移動にのみ使われることがほとんどで、不稼働率は95%に達します。自動車を保有せず、必要な時だけ車を利用するようになると、車の販売数は減少する可能性があります。
繋がるクルマ、中でも自律走行型のクルマでは、運転時間の使い方が変わる可能性もあります。2013年の調査によると、50%以上の回答者が、車での移動中に「音楽を聴く」「電話」「ビデオ視聴」「インターネット閲覧」がしたいと答えています。
trend seven新興国へのシフト
1人あたりの所得が1万~2万 米ドルのレベルまで増加すると、その国で車の所有が本格化します。
2025年には新興国の多くが初めてこのレベルに達し、低価格・低コストの小型車へのニーズが非常に大きくなります。
たとえば2025年までにインドの自動車販売は740万台に達し、世界第3位の市場に成長するでしょう。
すでにマイカーブームを経験している中国でもさらに増え、カーシェアが人気になることが予想されます。
新興国市場が将来の成長を支配する
一人当たり所得が増加するにつれ、新興国市場が世界の新車購入シェアに占める割合はより大きくなるでしょう。
自動車販売台数(単位:100万)
世界の自動車業界は大変革を遂げようとしています。
テクノロジーに牽引されたこの転換は、人口動態・規制・環境からのプレッシャーにも影響されています。
2025年にはクルマとクルマを取り巻く環境は大きく変わります。
クルマ
燃費性能の高いエンジンと軽量素材、
自律走行システムによって、
より高性能・低燃費になります。
業界
テクノロジー企業の新規参入や低価格でハイテク部品を製造するサプライヤーを得て、
自動車業界は進化します。
ドライバー
車はシェアして、メディア視聴や電話を
かけるスペースと考えるようになります。
こうしたドライバーの割合は新興国市場においてますます増えるでしょう。