地球温暖化への適応

20 02 2020

世界のGDPの約80%を創出し、人口の半分以上が暮らす都市は、気候変動への適応で中心的役割を果たすことになります。国連の予測では都市に住む人口の割合は2050年には3分の2に達すると見られています。このレポートでは気候変動への耐性を強化する施策など、「都市」を切り口に地球温暖化の影響を考えます。

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地球温暖化への適応

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  • 地球温暖化がいつ、どの範囲に、どの程度の影響を及ぼすのかは依然として明らかでないが、潜在的なリスクはきわめて大きい。温室効果ガス排出量削減の必要性に関心が集まっているが、今後この方面でこれまでよりはるかに多くの作業が必要になるだろう。しかし、たとえ排出削減が進んだとしても、それと平行して、世界が予想される気候変動の影響に耐えられるようにするための適応の努力も必要になるとみられる。
  • 気候変動は地球のありようを変える可能性がある。今後数年の適応努力を不可欠なものにする可能性がある影響として、気温上昇、嵐の威力拡大、氷河融解、海面上昇、農業パターンの変化、食料と水の利用可能性と質への圧力、人間の健康に対する新たな脅威などが考えられる。
  • 気候変動への適応の最前線に立つのは都市。適応は広範囲で必要になる見通しだが、本稿では都市に焦点を絞る。世界の人口の半数以上が暮らし、世界のGDPの約80%を創出する都市は、気候変動への適応で中心的役割を果たすことになるだろう。一部の発展途上国における急速な都市化も、適応における都市の重要度を高める公算が大きい。
  • 都市の気候変動への適応が、過去最大級のインフラ整備を促す可能性がある。気候変動への耐性を強化するには、沿岸地域の保護、気候変動への耐性を備えた建築、より堅牢なインフラ、水・廃棄物管理システムの更新、危機に対する抵抗力・回復力の高いエネルギー、より強固な通信・輸送システムなどへの投資を伴う大規模な都市計画が必要になるとみられる。影響の発生時期と規模をめぐる不確実性が高いとはいえ、一部の都市は今すぐ適応への投資を開始するのがおそらく賢明だが、気候変動に関する特定の予測に固執せず、将来の柔軟な対応の余地を最大限に残しておくよう配慮するべきだろう。
  • 気候変動に対する都市の適応はきわめて大規模な作業になるため、革新的な資金調達源の利用が必要になる可能性が高い。最も経済的に繁栄している都市でさえ、地方税収以外に、中央政府の資金、官民パートナーシップ、機関投資家、保険会社、そして発展途上国では国際的な金融機関に財源を求めざるをえないだろう。資金調達を支援する法律、規制、市場などの「ソフトインフラ」も重要になるとみられる。
  • 適応は公平性の問題を生むことがある。都市の適応は、どの都市が適応を支援でき、どの都市が支援できないのか、あるいは限られた資源を都市内のどこに配分するのかといった公平性の問題を引き起こす可能性がある。最も経済的に繁栄している都市もおそらく例外ではない。問題の多くは固有の局地的なものである可能性があり、その場合には状況がさらに悪化するおそれがある。

 

 

 

 

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